マゴットセラピー・足切断を救う ヒロズキンバエ・花粉を媒介
糖尿病で足の潰瘍が治らず、感染が急に拡大し、
やむなく足の切断を検討される場合があります。
「自分の足を切りたくない」
そう望まない人がどれだけいるでしょうか。
そんなとき、切らずにすむかもしれない治療法。
それが、マゴットセラピーです。
マゴットセラピーとは
マゴットセラピーで用いるのはクロバエ科、キンバエ族のヒロズキンバエの幼虫のウジ虫です。
世界で最も多く使われているハエです。温帯から亜熱帯にかけて広く生息しています。
といっても、自然界の幼虫をそのまま使うわけではありません。
医療用の無菌性ウジ虫(以下マゴット)として生産管理されたものを使います。
たとえば、糖尿病性足潰瘍という慢性の感染性創傷に閉じ込めます。
すると、その中でマゴットは傷の汚れたところだけを食べて急成長します。
その結果として、彼らは私たちの傷をきれいにして治す助けをしてくれます。
きわめて古典的で伝承的な治療法ですが、現代の治療法と較べて効果が劣るわけではありません。
すでに世界の多くの国でたくさんの人の治療に使われてきました。
慢性創傷に対して一定の効果があり、安全性の高い治療法です。
それでも、ウジ虫と聞くと、誰もが想像するだけで「気持ち悪い!」と感じるでしょう。
まして、自分の身体におくことなど「絶対にできない」と言うかもしれません。
あるいは、そんな治療は「怪しげだ」と考えるかもしれません。
無理もありません。医療者にとってもウジ虫は最も避けたいと感じる虫です。
マゴットセラピーがなぜ有効なのかは治療内容のページをご覧下さい。
ヒロズキンバエによる花粉媒介
イチゴの受粉などにはミツバチが使われていますが、近年世界中でミツバチの不足が問題になっています。
研究を重ねた結果、マゴットセラピーに用いられるヒロズキンバエは、ミツバチよりも花粉媒介に有利な点があることが
わかりました。すでにミツバチの補完としてほぼ日本全国で導入されており、農林水産省からも高い評価を受けています。
ミッション
私たち日本マゴットフォーラム(JMF)では、できることなら、ひとりでも多くの足を救えればと思っています。
マゴットセラピーがその手段のひとつとして今後確立できればと望みます。
そのため、日本でマゴットセラピーが広く普及するように基礎研究と臨床の両面から挑戦しています。
また、ヒロズキンバエによるイチゴなどの受粉の研究および促進も行っています。
お知らせ
2024年1月4日 ラジオNIKKEI ドクターサロンで「マゴットセラピー」が放送されました。
解説:岡田匡 聴き手:順天堂大学名誉教授・客員教授 池田志斈先生
https://www.radionikkei.jp/podcast/dr_salon/240102.html
2023年7月22日 京都大学 人と社会の未来研究研究院特定教授 沼田英治先生のオンライン公開講座
「昆虫と人間のかかわりおよびマゴットセラピーの話」が8月6日(日曜)14:00~15:00に開催されます。
令和5年度オンライン公開講義「立ち止まって、考える」 | 京都大学 (kyoto-u.ac.jp)
2021年12月18日 京都大学名誉教授沼田英治先生のウェブサイトが開設されました。
https://numatahideharu8r.wixsite.com/website
2021年11月16日 令和3年第22回民間部門農林水産研究開発功労者において 公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会会長賞
「ミツバチの代替ポリネーターとしてのヒロズキンバエの利用」(佐藤卓也・(株)ジャパンマゴットカンパニー)
を受賞しました。https://www.affrc.maff.go.jp/docs/press/attach/pdf/211116-2.pdf
2021年3月21日 岡山大学は、日本で初めてマゴットセラピーを行い、大学発のベンチャー企業として(株)ジャパンマゴットカンパニー
を創設したことから、「岡山から世界に、新たな価値を創造し続けるSDGs推進研究大学」として
ハエが命と農業を活かすためにSDGsイノベーション事業を推進します。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000072793.html
2019年8月14日 小倉第一病院広報室の看護師兼イラストレーターの松井真理子様がマゴットとヒロズキンバエ
の可愛いイラスト(サイト内のものすべて)をご提供してくださいました。会員にも加わっていただきました。
2018年12月27日 日本マゴットフォーラムの趣旨に賛同し、応援してくださる会員として、佐藤卓也氏・(株)ジャパンマゴットカンパニー、
中野剛氏・(株)アピ・ミツバチ課、小阪健一郎先生・明石市立市民病院に加わっていただきました。
2018年12月1日 第6回日本マゴットセラピー症例検討会を京都大学大学院理学研究科沼田英治教授のご後援により、
京都大学理学研究科セミナーハウスにて開催しました。
特別講演では、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門の
石橋純先生に昆虫抗微生物タンパク質応用の試みについてご講演をしていただきました。
また(株)アピ 養蜂部ミツバチ課の中野剛氏にミツバチの生態と養蜂、ポリネーション業界の
今後とビーフライへの期待についてご講演をしていただきました。
研究部門の目覚ましい進展がみられました。
2018年11月15日 下記の第2回推進会議を奈良県農業研究開発センターで行いました。
2018年6月7日、8日 平成30年度革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)
「冬季寡日照地域のイチゴ栽培におけるミツバチの補完ポリネーターとしてのビーフライ
(ヒロズキンバエ)の利用」
第1回推進会議を岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学センターで行いました。
2018年2月14日 マゴットセラピーの現代の第一人者であるアメリカのシャーマン先生に日本マゴットフォーラムの
Foreign Special Advisorになっていただきました。
2018年1月28日 『第2回慶應大学医学部 健康医療ベンチャー大賞』社会人部門で東京慈恵会医科大学熱帯医学講座の
西嶌暁生先生らのチーム『プロジェクトM』は準優勝を獲得しました。
治療効果の高い新たなマゴット系統の応用および豚鞭虫による潰瘍性腸疾患などの治療や医療用ヒル
による瀉血療法などの研究を行っています。
(チームメンバー:西嶌暁生、嘉糠洋陸、青沼宏佳、吉田拓磨、大塚沙緒里、西嶌順子各先生)
2017年12月2日 第5 回日本マゴットセラピー症例検討会を東京慈恵会医科大学熱帯医学嘉糠洋陸教授の
ご後援により、熱帯医学講座にて開催しました。
特別講演では、ショウジョウバエ自然免疫研究の第一線でご活躍中の倉田祥一朗先生
(東北大学大学院薬学研究科教授)をお招きしました。
研究グループ発表・臨床グループ発表で活発な討論を行いました。
2016年12月3日 第4回日本マゴットセラピー症例検討会を京都大学大学院理学研究科沼田英治教授のご後援により、
京都大学理学研究科にて開催しました。
後藤慎介先生(大阪市立大学大学院理学研究科教授)に特別講演をしていただきました。
2015年10月3日 第3回日本マゴットセラピー症例検討会を岡山国際交流センターにて開催しました。
嘉糠洋陸先生(東京慈恵会医科大学熱帯医学講座・衛生動物学研究センター教授)に
特別講演をしていただきました。
2014年12月20日 第2回日本マゴットセラピー症例検討会を岡山サムライスクエアにて開催しました。
沼田英治先生(京都大学大学院理学研究科教授)と西本登志先生(奈良県農業研究開発センター総括研究員)
に特別講演をしていただきました。
2010年1月 ミツバチの代替用の花粉受粉媒介として初めてヒロズキンバエの利用が瀬戸内市で行われました。
2008年2月23日 日本で初めてのマゴットセラピーに関する症例検討会である第1回マゴットセラピー症例検討会を
岡山インキュベーションセンターにて開催しました。
沼田英治先生(大阪市立大学大学院理学研究科教授)に特別講演をしていただきました。
2005年4月 岡山リサーチパークインキュベーションセンター(ORIC)内に国内で最初のマゴット生産供給会社
(ジャパンマゴットカンパニー)が設立されました。
2004年4月 岡山大学心臓血管外科元講師の三井秀也先生らによって日本で初めてマゴットセラピーが行われました。